ウィーン気質
ウィーン・フィルのコンサート・マスター達で編成されたこの合奏団は1977年にもベートーヴェンの七重奏曲を録音したが、新盤は音質の良さと微妙な変化に富む叙情的な表現でより魅力的だ。ウィーンの演奏家にしかできない表現があるとすれば、それはこの曲の第二楽章ラルゴに感じられる哀愁に満ちた独特の情緒だろう。そこでヘッツェルが弾くヴァイオリンの柔らかな歌いまわしは、真似のできないウィーン訛りだ。ベートーヴェン29歳の若書きの作品ではあるが、この曲の楽器編成にも彼の音楽的センスの良さが顕著で、また曲中に後のシンフォニーやコンチェルトに使われる幾つかの音形が既に現れている。テンポ・ディ・メヌエットでは殆ど幾何学的とも言える均衡の取れた古典派特有の形式美も聴き所のひとつだ。2本のホルンが加わる六重奏曲は、音が渋く奏法も非常に難しいとされている名物ウインナ・ホルンの独壇場で、愛好者には興味が尽きないだろう。参考までに往年のウィーンの風情に浸ることができるもうひとつの歴史的名演がある。ウィーン八重奏団による1956年のモノラル録音で、シュポアの九重奏曲とのカップリングで英テスタメントのシリーズとして出ている。 Dolce Vita |